矯正治療の知識About Orthodontics

歯科矯正用アンカースクリュー

従来では難しかった、歯の三次元的な移動をコントロールできる装置

歯科矯正用アンカースクリューは、1980年に初めて矯正治療に導⼊された、直径1.6~1.8mm・⻑さ6.0~10.0mmほどのチタン合⾦でできた⼩さなネジです。
矯正治療の、必要な時期にだけ使⽤されるもので、不要になったら撤去します。
この装置は、動かしたい⻭を動かすための動かない柱として⽤いられ、⻭を効果的かつ快適に動かすことができます。

⻭を動かすための柱は、なぜ矯正治療を⾏う上で重要なのでしょうか?

⻭を動かすということを、綱引きに例えてみます。綱引きの場合、動かしたい相⼿と同じ⼒で挑むと、相⼿を前に引っぱることもできますが、⾃分も前に引っぱられてしまいます。⾃分が全く動くことなく相⼿を前に引っぱるためにの⼀つの⽅法として、⾃分を⼤きな⽊にくくりつけて、⾃分が動かなくするような⼯夫があります。そうすれば、⾃分は前に引っぱり出されることなく、相⼿を前に引っぱってくることができます。この、⼤きな⽊の役⽬をする装置が歯科矯正用アンカースクリューなのです。
動かしたくない⻭は動かさず、動かしたい⻭だけを、動かしたい量と⽅向にコントロールするための小さな装置が歯科矯正用アンカースクリューなのです。

⼩さなネジが患者さんの負担を減らします

歯科矯正用アンカースクリューが普及するまでは、フェイスボウという患者さん自身が取り外すことができる装置が、この役割を担っていました。しかし、これは患者さんにとって煩わしいものであり、使⽤時間と比例して効果に個⼈差が出てしまいます。
歯科矯正用アンカースクリューは⼀度埋⼊すると、⻭槽⾻にしっかりと機械的な嵌合をするため、脱離してしまうことは稀です。このため、フェイスボウで起こり得る問題をすべて解決でき、たくさんの患者さんに受け⼊れられています。この⼩さなネジがとても⼤きな役割を果たすのです。

歯科矯正用アンカースクリューの利点

  • 効率的かつスムーズに、⻭を移動させることができる。
  • 従来の⽅法より、患者さんの負担を軽減できる。

歯科矯正用アンカースクリューの埋⼊法とお⼿⼊れの⽅法

埋⼊する部位の⻭⾁にほんのわずかな⿇酔を⾏い、⿇酔がしっかり奏功していることを確認して歯科矯正用アンカースクリューを⻭⾁と⻭槽⾻に埋⼊していきます。埋⼊時、多少押されるような感覚があるかもしれませんが、これは⿇酔が効いていないわけではありませんので、⼼配しないで下さい。埋入処置は、10-15分で終了します。この歯科矯正用アンカースクリューは、治療終了時もしくは必要がなくなった段階で撤去されますが、その際は⿇酔を必要とせず、数分で終わります。
もしも、歯科矯正用アンカースクリューに対してすごく痛みが伴う処置ではないかとご⼼配なさっているのであれば、どうぞご安⼼下さい。
あなたが想像しているよりもはるかに痛みが少なく、安全な処置です。
埋⼊処置後は万が⼀のための鎮痛剤・抗⽣物質と専⽤の洗⼝剤・⻭ブラシをお渡しいたします。鎮痛剤はお痛みが出た時のみ服⽤していただき、抗⽣物質は指⽰通り飲み切って下さい。また、お家での⻭ブラシの仕⽅は、通常の⻭磨きに加えて、お渡しするタフトブラシにて、お渡しする洗⼝剤に⽑先を浸していただき、歯科矯正用アンカースクリュー周囲を磨いて下さい。また、そして、最後にその洗⼝剤にて洗⼝していただきます。
矯正治療を⾏うすべての患者さんにこの歯科矯正用アンカースクリューが必要なわけではありませんが、必要な⽅にはたくさんのメリットがある治療法です。

出っ歯での使用例

歯科矯正用アンカースクリュー
を使用しない場合

奥歯と前歯にゴムをかけ、前歯を下げる治療をします。この時、前歯も後ろに下がりますが、奥歯も前に引っ張られてしまいます。そのため、せっかく抜歯によってつくったスペースに対して完全には前歯を下げきることができません。

歯科矯正用アンカースクリュー
を使用した場合

奥歯ではなく、骨に埋入した歯科矯正用アンカースクリューにゴムをかけます。そうすることで、奥歯が前に引っ張られる力が生じないため、抜歯によってつくったスペースに対してしっかりと前歯を下げることができます。

上下顎前突の症例

初診

抜歯を行い、歯科矯正用アンカースクリューを用いて前歯を後ろに下げている

動的処置終了時


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